学童野球を「育てる」
2022年 学童野球ルール改訂事項
■学童野球における2022年からの導入ルール
2021年までのルール |
2022年からのルール |
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ルール内容 |
試合は7イニング制で行う。 |
試合は6イニング制で行う。 また、1時間30分の時間制限を採用する。 |
*ホームベースサイズの拡大(一般用ホームベース使用)は、2022年は全国大会のみで採用し、2023年より全国一律に導入します。
詳細は、こちらをご確認ください。↓
■新ルール導入に至る背景・目的
JSBBでは、医科学委員会が中心となり子どもたちの肘肩障害を中心とする野球障害予防を目的に各種対策の検討、検証を行っています。その中で2021年に新ルールの導入検討を行いました。
学童野球は、国内では、ポピュラーなスポーツでありますが、障害の発生頻度が高いスポーツでもあります。特に肘関節投球障害の発生率は高く、これは初期治療を逸すれば、完全に修復せずに選手生命を断念せざるを得ない場合や、将来的に日常生活動作に支障をきたす後遺症として残る場合があります。これらの対策として、
①十分な知識を有する指導者の養成
②競技者を守るための有効なルール制定
の2点が挙げられます。
指導者養成は、各種講習会等がその役割を果たしていますが、成果が表れるには一定の時間を要します。一方、子どもたちを守るための有効なルールの制定、導入は安全面のみならず競技としての側面を損なわないかどうか等、あらゆる観点から慎重な検証が必要と考えました。医科学委員会において、8項目の新ルール導入について提案がなされ、スポーツ医学的観点から子どもたちを守るための有効なルールとして、検証を行いました。
検証においては、全国の複数チームに新ルール(案)を用いた練習試合を実施してもらい新ルール導入の適否について指導者、保護者から意見を集め、最終的に理事会において、2022年からの新ルールの導入を決定しました。今回未導入のルールについては、今後、さらに詳細な検証を実施する予定です。
■選手・指導者の皆さんに伝えたいこと
~学童球児のみなさんへのメッセージ~
学童野球は、“野球選手としてのスタート”の時期です。これから、多くの選手が中学、高校、大学と次のステージに進んでいくことでしょう。中には、プロの世界にはばたく人もいるかもしれません。すべての学童球児が、プロ野球選手になれる可能性を秘めています。
つまり、未来あるみなさんにとって、今が“選手としてのピーク”ではない、ということ。そして、「これからも野球を続けたい」「プロ野球選手になりたい」と願うみなさんにとって、今どんな競技生活を送るのかが、実はとても大事です。特に気をつけなくてはいけないのが「投げすぎ」です。骨や筋が成長過程である今、無理な負担をかけないよう十分注意する必要があるのです。
2019年に「1日70球」の投球数制限が導入されたのも、学童球児のみなさんを肘や肩のケガから守るためです。2022年から新たに大きなルール変更を導入します。
みなさんが大人になっても全力でボールを投げることができるように、大好きな野球をこれからも長く続けることができるようにと、将来を考えた上でルールが変更されることになりました。チームの仲間や友達、監督、コーチと一緒に、学童野球でしか経験できない楽しい思い出をたくさん作ってください。
これからもみなさんがケガをせずに野球ができるよう、次の5つの約束を守って欲しいと思います。
■学童球児のみんなへの5つの約束ごと ①正しい投げ方を身につける ②無理に投げすぎない ③練習前にウォーミングアップ、練習後にクーリングダウンをしっかり行う ④疲れたら休む ⑤野球を楽しむ |
~指導者の皆様へのメッセージ~
子どもたちの明るい未来のために「勝利」と「育成」の関係性をじっくり考えていきましょう。
ルール改訂について、本質に立ち返りますと、他競技と比べて野球はただでさえルールが複雑であり、子どもたちにとってはルールを覚えることにも一定の負担があると考えられます。新たなルールを導入・設定しなくとも、野球障害から守ることができれば、それが最良と考えています。
そこでキーとなるのは、子どもたちに最も近い立場で指導をされている皆様の考え方や指導法です。多くの指導者の方は、現在のスポーツ界・野球界のスタンダードや最新の指導法を積極的に習得し、現場での指導に還元してくださっています。しかし、未だ小中学生期の子どもたちの肘肩障害の発症に歯止めがかからず、野球を断念せざるを得ない子どもたちが多数いるという現実もあります。
スポーツである以上、勝利によって得られる人間的成長や技術力の向上は必ず存在します。しかし、これまでよりも一歩引いた立場で、子どもたちの行動、野球に向かう姿勢を観察してみてください。少しだけ我慢し、子どもたち自身の判断でプレーをさせてみてください。
指導者の皆様には、子どもたちをそれぞれの夢や目標の場所まで送り届ける役割があります。また、子どもたちとの間には、これまで構築してきた信頼関係もあるでしょう。子どもたちが皆様を信じているからこそ、自主性を尊重し、自立を促し、指導にあたってみていただきたいのです。
試合で「勝つことを目的」にすることは大事ですが、子どもたちの「選手としてのピーク」が将来的に訪れることを見守りながら、「育成」をベースにしたチーム運営や試合進行をぜひ試してみてください。それが、指導者の皆様の新たな発見や子どもたちの成長にきっと繋がるはずです。